のっぺらぼう(のっぺらぼう)
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妖火 のっぺらぼう(のっぺらぼう) 妖火

 掴みどころがない、凹凸のない樣、一面が平らで変化のない状態を表す言葉である。

 のっぺらぼうと言えば、やはり小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の『むじな』であろう。この話は所謂「再度の怪」という古典的な怪談噺の形である。

「再度の怪」の骨子
 ある男が微酔い気分で家路を急いでいると、夜道に蹲る女がいる。男は「こんなに暗い夜道でどうしなさった?」と声をかける。
 女は泣いている。
 男は「こんなとこで女一人は危ない。明るいところまでご一緒しよう」と、女の方に手をかける。と――。
 振り向いた女の顔は、のっぺりとした白面――。
 男は驚き、這這の体で逃げ出す。駆けて駆けて駆けて、やっと屋台を見つけ駆け込む。息が整いかけると、今出逢った女のことを屋台の親父に、途切れ途切れに話をする。するとその親父は「こんな顔だったのかい?」と顔をつるりと撫でる。
 現れた顔は先程の女と同じく、白面模糊――。
 男は余りの驚きで気絶してしまう。

 のっぺらぼうの起源を辿ると、どうやら中国に伝わる妖怪らしい。『夜譚随録』に収録されている『紅衣婦人』がそれである。こちらは「再度の怪」ではないが、やはり酔った男が屈み込んだ女に声をかけ、振り向くと――、という粗筋である。本邦では『貉』に代表されるように、のっぺらぼうといえば・狸・狐・川獺(かわうそ)など、長生きして妖力を得たモノが化けるというのが定番となっている。

 のっぺらぼうは果たして妖怪なのか? 本邦で妖怪と言うより、化け(る)物としての属性が強いようである。また余談であるが、別称でのっぺらぽうとも言われることから、のっぺら坊と表記するのは些かの語弊があるかも知れない。

(文責:カメヤマ)

・ 参考文献:中国妖怪人物事典
・ 属性:
・ 出現地区:関東地方,東京都
・ 小説など:
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2000.7.21 22:43