三吉鬼(さんきちおに)
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妖火 三吉鬼(さんきちおに) 妖火

 何処からか人里に出てきて酒屋で大酒を呑み、代金を無理に払わせようとすると仇をなしたが、黙って帰すとその夜の内に酒代の十倍もの薪を戸口に積んでいったと云う。兎に角酒を好きなだけ呑ませれば、人力の及ばないことをやってくれた。
 村人はこの噂を聞きつけ、それぞれに酒樽を備えては「山にある大きな松の木を庭に移して欲しい」などと願を掛けるようになった。こうすると一晩の間に酒は無くなるが、願いは叶えられたと云うことだ。いつしか彼のことを三吉鬼と呼ぶようになった。

 三吉鬼というのは不思議な呼び名である。親しみやすい<三吉>と、人の力の及ばないことをやってのけるから、その力を<鬼>になぞらえて、三吉鬼と読んだのだろう。

(文責:カメヤマ)

・ 参考文献:『むかしばなし』(只野真葛),全国妖怪事典
・ 属性:
・ 出現地区:東北地方,秋田県
・ 小説など:
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2000.7.21 22:44