白澤(はくたく)
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妖火 白澤(はくたく) 妖火

 東望山(中国湖西省)の沢に獣が住んでおり、ひとつを白澤と呼んでいた。白澤は能く言葉を操り万物に通暁しており、治めしめるものが有徳であれば姿をみせたと言う。
 中国神話の時代、三皇五帝に数えられる黄帝が東巡したおりに出会ったと言われ、白澤は一万一千五百二十種に及ぶ天下の妖異鬼神について語り、世の害を除くため忠言したと伝えられる。

 鳥山石燕は『今昔百鬼拾遺』でこれを取り上げており、その姿は一対の角をいただき、下顎に山羊髭を蓄え、額にも瞳を持つ三ツ目、更には左右の胴体に三つずつ目を描き入れており、併せて九つ目として描いている。『和漢三才図会』にも描かれているが、こちらは獅子に似ているという。
 『礼記』によると、冬になると陽気を受けて角を生じるとあり、白い躰に陽を受ける姿を見て、白澤となったのかもしれない。

 白澤の図は日光東照宮(栃木県日光市)でも見ることが出來、拝殿に向かって左の杉戸に描かれており、江戸初期の画家:狩野探幽の手によるものとされている。
 白澤を描いた図を懐中に旅をすると安全であったり、また枕に忍ばせておくと悪夢を見なくなったり邪気を祓うとも言われ、妖怪よりも霊獣といった面持ちが強い。
 また江戸末期の越中に、くたべと言う、容姿や逸話が白澤そのものの霊獣が現れたらしく、越中に関係してか白澤は漢方薬の守護神とされ、一部で信仰の対象になっている。

(文責:カメヤマ/希羽)

・ 参考文献:今昔百鬼拾遺
・ 属性:山,
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2000.7.21 22:42