火間虫入道(ひまむしにゅうどう)
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妖火 火間虫入道(ひまむしにゅうどう) 妖火

 面倒を嫌ってだらだらと怠けてばかりで一生を終えた者が成ると云われ、別名ひまむし夜入道とも。
 生前の因果か、夜なべをして懸命に働いている処にそっと現れて、行燈や油皿の油を長い舌でぺろぺろと嘗め尽くしてしまう。

 『俚諺収攬』に「世の中をらくにへまむしよ入道あればあたままなけりやそのぶん」という句があるが、

 楽しく毎日を過ごそうじゃないか
  火間虫入道みたいにさ
   成れりゃ成れたで、成れなきゃそれなり

というような意味であろう。

ヘマムシヨ <ひまむし>は五韻相通で<ヘマムシ>と表すことも出來、この片仮名四文字で顔を描く文字遊戯がある。これに草書体で<入道>と描き加えれば体が整う。また<ヘマムシヨ>の五文字のパターンもある。


火の側に現れるから<火間虫>なのだろうが、暇を持て余す虫、<暇虫入道>と書いても意味が通じそうだ。

 妖怪研究家である多田克己は更に<虫>を<夢死(空しく一生を送る意)>であると。とすると<暇夢死入道>となるのだが、鳥山石燕は持ち前のセンスで謎掛けをしている。<火間>をカマと読ませ、すなわち<釜><窯><竈>であり、<火虫>は<蜚虫(ひむし=ゴキブリ)>の語呂合わせ。

 では何故ゴキブリか。『和漢三才図会』には「夜はすなわち出でて灯火を掠め」と説明しており、これは火間虫入道の特徴と一致している。

 更に石燕は、画左下にある竈と窯にクサヨモギを描き込んで正体はゴキブリであると示している。これは江戸時代の俗信で、ゴキブリを避けるのにクサヨモギを竈の間に挿す、と云う風習を参考にしたのだろう。

(文責:カメヤマ)

・ 参考文献:今昔百鬼拾遺,
・ 属性:家,
・ 出現地区:
・ 小説など:百鬼夜行第七夜 火間虫入道』京極夏彦(「小説現代」1998.11月号)
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2000.7.21 22:42