琴古主(ことふるぬし)
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妖火 琴古主(ことふるぬし) 妖火

 景行天皇(大足彦尊)が九州遠征された際、平原の中に見晴らしの良い丘を捜させ、そこの草木を払い、宴を行った。首尾良くいったので天皇は大いにお喜びになり、記念とすべく一張の琴をその丘に立てた。途端、忽ち一本の立派な樟樹となり青々と繁ったという。それ以来夜更けにその辺りを通ると琴の音が聞こえてきたといい、いつしかその不思議な現象を琴古主と呼ぶようになった。

 樟樹とは楠のことで日本原産では最大の樹木であり、天皇を象徴しているのではないか。それが青々と繁ると云うのだから、天皇の繁栄を示したエピソードであり、多分後世に作られたものであろう。またこの平原は現在の佐賀県神埼郡南部地方ではないかと云われている。

 さて琴古主。「この樟樹は元々琴であった」ということを表している名前ではないだろうか?

 土佐光信の『百鬼夜行絵巻』にそれらしき姿を見つけることが出來、鳥山石燕もその意匠を踏襲している。龍のような胴、獅子か龍のたてがみの中にギョロリとした眼が光っていて、正に琴の付喪神といった風情である。

(文責:カメヤマ)

・ 参考文献:百器徒然袋
・ 属性:器物
・ 出現地区:九州地方,佐賀県
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2000.7.21 22:43
琴古主
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